鉄道模型のLEDを効率よく光らせる
ヘッド・テールライトを豆球からLEDに交換改造した際、同じLEDをつかい、同じような
電流値で設定しているのにもかかわらず、車種によって明るさに違いが感じられることが
ままにあった。
最初はプリズムの関係だろうとあまり気にしてはいなかったのだが、自作パーツ製作を
はじめたばかりの頃に作った室内灯のハンダ割れを修復した時、その光の強さの違いが
気のせいではなかったことに気づかされた。
室内灯 LED化
写真に写るTOMIX製E217系は、共にLED化改造を施し、同じパワーパックから同じ電力で
ヘッドライトを光らせている。左側の車両の方向幕とヘッドライトが右側より明るく光ってると
思った方は間違いではない、左側の車両のライト基板は純正基板の豆球をCRDとLEDに
置き換えただけの改造で、右側はライト基板を作り直し、一昔前のKATOと同じ様な抵抗器と
ヘッド・テール用LEDを乗せただけのシンプルな回路の基板となっているのだ。
実はTOMIX製品は古くからライト基板にコンデンサをかませ、ヘッド、テールライトにもPWM
による常点灯システムに対応した設計となっていた。豆球は明るさ以外にもLEDと比べ各種
耐久性が無く、ON-OFFを繰り返すような動きにも当然弱い。モーターの動きをコントロール
しやすいPWMの高速切り替えにこの小さな豆球がどれだけ耐えられるか分らない、コンデンサが
搭載されたライト基板は、TOMIX社員のそういう考えが少なからずあってのことなのだと思う。
その設計が偶然にも良い方向へ進んだ、コンデンサが搭載されてない物に比べ、PWM
制御下において停止時はおろか、低速走行時においても明るく光るようになったのだ。
写真の373系は左側が純正ライト基板を搭載してる車両だ。当然改造ライト基板を搭載し
バカみたいに照らしている右側と比較すれば暗いのだが、純正側も控えめながらきれいには
光っている。実際に現物を目の前にしても豆球の電力量が気にならないなら改造するほど
ではないと感じるほど十分な光の量だと思っている。
コンデンサがあると光が強くなる理由としては、PWMの電圧の波をコンデンサが平滑化し、
かつライト専用として電気を蓄ているので、低い電力供給量ながら12Vに近い高電圧の
電気が常にライトに供給される。そしてLEDに関しては、ある一定の電力供給量により、
LEDの順電圧(VF)以上の値でコンデンサの電圧が維持できるようになると、CRDの振る舞い
により、PWMのデューティー比に関係なくLEDの光の強さが最大となる、ということなのだろうか。
今回はそれらに対してのかんたんな検証と、金額的に比較して差が激しいCRDと抵抗器の
コストパフォーマンス検証も兼ねて、コンデンサを含めたパーツの使い分けでどれくらいLEDの
性能の差が出るのかをブレッドボードを使い調査してみることにした。
検証用に使うパワーパックはTOMIX製のN-600、実用向けの負荷として、マイクロエース製の
京急旧1000形(TOMIX M-5モーター換装済、10mA、10μFの室内灯装備)をM車含め4両で
同時通電状態にしている。
まずは左右とも整流ダイオードと2.4kΩの抵抗を繋げた状態である。同じロットのパーツという
こともあって当然同じような光り方となっている。
それでは左側の回路に、抵抗とLEDをバイパスするようにコンデンサをつなげてみる。
やはりここで明らかな違い出てくる。コンデンサがLEDの順方向電圧以上の電力を常に提供
するようになり光の差が出はじめる。
次は抵抗器とCRDで検証してみることにする。
左が抵抗(870Ω)で電流を流しているLED、右がCRD(10mA)で電流を流しているLEDである。
N-600のボリュームの2メモリ目では2つとも眩しいくらいに光り、写真写りが悪くなってしまった
ので1メモリ目まで絞って検証した。抵抗の値は12V、Vf=3.1の値で電流が約10mA流れる
よう決めた物だが、使用しているLED(スタンレー製UW3804X)の順方向電圧がそれより若干
高めの物だったからか、CRD側と比べて若干暗くなってしまっている。
今度は抵抗(CRD)とLEDをバイパスするようにコンデンサを、それぞれの回路につなげてみる。
先ほどと同じ1メモリ目に固定しているが、双方とも光の量が増えている。
ここで少しずつメモリを上げていき、どのように光の量が変わるのかを見てみた。
上の写真は2メモリ目時の光の量であるが、左右ともほぼ同じ位の光の強さとなっている。
1メモリ目のからボリュームを上げた際、2メモリ目ちょっと手前で右(CRD)側の光の強さに
変化が見られなくなり、それに続いて左側もほぼ同じ光の強さとなってしまった、そしてこれ以上
ボリュームを上げてみても光の量に変化は感じられなくなっていた。
静止画では分りづらいと思い動画も取ってみることにした。
動画はブレッドボード以外の負荷は繋げず、パワーパックから直にブレッドボードへとつなげている。
つまみを最大にしたり、フラッシュさせてみたりして、LEDの光が最大になるタイミングを調べてみた。
CRDや抵抗器による電流値の設定、コンデンサの容量等で振舞い方が若干変わることもあるが、
自分が扱う室内灯向けの設定値ではCRDの代わりに抵抗器を使っても、若干の性能低下は
見られても明確な不満が出るほどの差は無いということが分った。ヘッド・テールライト関連でも
使用パーツが増える分構造は複雑になるが、光の量に不満があればコンデンサを組み込んで
みるのもいいのかもしれない。
※追記(2014/12/14)
常点灯システムの整流ダイオードには想像以上の大電流が流れます。